私たち夫婦には子どもがいません。私が妻より先に亡くなったとき、兄弟姉妹が相続について何か権利を持つことがありますか?
A.被相続人(故人)の直系尊属(父母。父母が亡くなっているときは祖父母)が既に亡くなっている場合は、兄弟姉妹が法定相続人となります。ただし、兄弟姉妹は、配偶者や被相続人の子、直系尊属と異なり、遺留分が認められていません。
兄弟姉妹が法定相続人となる場合
子どものいない夫婦の一方が亡くなった場合の相続人は、
①配偶者と直系尊属(父母。父母が亡くなっているときは祖父母)
②直系尊属が既に亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっているときは、甥姪)
③直系尊属も兄弟姉妹(甥姪)も亡くなっている又はいない場合は、配偶者のみ
となります。
ただ、被相続人(故人)が高齢で亡くなった場合は、既に父母や祖父母も亡くなっていることが少なくありません。そのため、子どものいない夫婦の一方が亡くなった場合には、兄弟姉妹(甥姪)が法定相続人となる可能性が高いと考えて相続対策を行うと良いでしょう。
子どもがいない夫婦の相続で起こりうるトラブル
配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合で、遺言がないときは、配偶者は被相続人の兄弟姉妹と遺産分割協議をしなければなりません。
しかし、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が疎遠だったり、関係が良くなかったりする場合は、連絡を取り合うことすら難しく、遺産分割協議(話し合い)がまとまらないことがあります。
特に、配偶者が法定相続分を超えて、今後の生活に不可欠な自宅不動産や預貯金を取得したいときは、代償金の額で揉めがちです。
このようなトラブルを予測して、義理の兄弟姉妹とお金(相続)のことで話(遺産分割協議)をしたくない、というご相談もよく受けます。
子どもがいない夫婦の相続対策
遺言の作成
このようなトラブルを回避する方法としては、遺言が重要です。遺言では、ご自身の財産(遺産)を誰に相続(取得)させるかを決めることができます。例えば、遺言により、配偶者に自宅不動産や預貯金を含む全ての財産を相続させることが可能です。
その他に回避する方法としては、配偶者への生前贈与や配偶者を生命保険金の受取人とすることが考えられます。しかし、ご自身の生活や介護の費用として現金や預貯金を手元に残しておきたい場合は、生前贈与や生命保険金で対応することが難しくなりますので、注意が必要です。
遺言では直系尊属の遺留分に注意
遺言の作成にあたっては、直系尊属(父母、祖父母)の遺留分(民法1042条)に注意してください。
遺留分とは、相続に際して、被相続人(故人)の財産のうち、「一定の相続人」に承継されるべき「最低限の割合」のことです。被相続人は、遺言や贈与により自らの財産を承継させることができますが、遺留分はこれを制限するものといえます。
例えば、被相続人が配偶者に全ての財産を相続させたいという遺言を作成しても、相続開始の時点で被相続人の母が存命の場合は、その遺言が母の遺留分(6分の1)を侵害していることになります。この場合、母が配偶者に対して遺留分侵害額請求を行うと、配偶者は母に対して侵害額を支払わなければなりません。
当事務所では、お子さんのいないご夫婦の遺言書作成のサポートも行っています。
残された配偶者には心穏やかに安定した生活を送ってほしいとお考えの方は、まずは無料相談にてご相談ください。
兄弟姉妹には遺留分がない
このように直系尊属には遺留分が認められているため、遺言で財産を誰に相続(承継)させるかを自由に決められないことがあります。
これに対し、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。つまり、法定相続人が配偶者と兄弟姉妹となる場合には、遺言で財産を誰に相続させるか自由に決めることができます。
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