遺言無効
遺言の効力が争われるケース
次のケースのように、ある相続人にとって想定していなかった内容の遺言が作成されていた場合は、遺言の効力をめぐって激しく対立することがあります。
Aさんには、子どもが2人いました。長男のXさんは、実家の隣に自宅を建てて、Aさんとも毎日のように会っていましたが、二男のYさんは、理由はよくわかりませんが、AさんにもXさんにも20年以上顔を見せていない状況でした。
Aさんは、晩年、寝たきり状態となり2年ほど入院しましたが、退院することなく病院で亡くなりました。
葬儀などを終えてXさんが実家でAさんの遺品を整理していたところ、Yさんが突然現れて、「実は父さんに遺言を書いてもらっている。」と言って手書きの遺言書を渡してきました。Aさんが渡された遺言書を見ると、「私の財産は全てYに相続させる。」という信じられない内容が書かれていたのです。
あなたがAさんの立場だったら、どうされますか?
以下では、遺言の無効を主張したい場合の対処について説明します。
遺言の無効主張
自筆証書遺言の場合
法律上定められた形式的要件を満たしていないという主張
自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、押印する必要があります(ただし、自筆証書と一体となる財産目録は自書である必要はありません。)。形式的要件を守っていない遺言は無効です。
例えば、パソコンで遺言を作成して印刷し、そこに署名押印したとしても、これは全文が自書されていないことになるので、無効です。また、高齢者の中には手が震えるため誰かに手を添えてもらって字を書くという場合もあります。しかし、最高裁は、このような方法によって作成された自筆証書遺言についても無効となる場合がある判断しています。
したがって、遺言が形式的要件を満たしていなければ、これを理由に遺言が無効であると主張することが考えられます。遺言の形式に少しでも疑問がある場合は、弁護士にご相談ください。
遺言者に遺言能力がなかったという主張
遺言能力とは、遺言を有効にすることができる資格をいいます。原則として、15歳に達した者であれば遺言能力があるとされますが、自分の遺言の意味(誰が何の財産を取得するか等)を理解することができない状態で作成された遺言は、遺言能力がない状態で作成されたものとして無効となります。
例えば、遺言の内容は多岐にわたっていて詳細であるにもかかわらず、遺言を作成した当時の遺言者(被相続人)は、認知症がかなり進んでいて時間、人、場所の認識に問題が生じていた場合には、遺言能力がなかったとして遺言の無効を主張することが考えられます。
もっとも、認知症を発症していたからといって遺言能力が常に否定されるわけではありません。遺言能力の有無は、医師の診断のみならず、遺言の内容、遺言者を取り巻く人間関係など種々の事情を考慮した法律的な判断です。実際は、医療記録や看護記録等を丁寧に読み込み、分析するという骨の折れる作業となります。
弁護士に依頼した場合は、弁護士が、医師による診断や診療記録だけなく、生前の被相続人の様子、遺言の内容等の様々な事情を収集・分析し、遺言能力の有無を争うことができるかを判断いたします。
遺言が偽造されたという主張
遺言が偽造された、つまり遺言者以外の他人によって作成されたと主張するケースもあります。例えば、遺言書の筆跡が、被相続人が作成した別の文書の筆跡と異なる場合です。
偽造されたか否かについては、筆跡鑑定すれば良いと思われるかもしれませんが、裁判では必ずしも筆跡鑑定のみで決まるわけではなく、遺言の内容等の様々な事情を考慮した上で判断されます。
弁護士に依頼された場合は、弁護士が、筆跡や遺言の内容等の事情を収集・分析し、偽造であるとされる見込みがあるかを判断します。
公正証書遺言の場合
公正証書遺言は、公証人が適法かつ有効に遺言がなされたことを証明する公正証書という文書によってなされる遺言です。公正証書遺言を作成するためには、証人2人の立会いの下、公証人という公務員の面前で、遺言者が公証人に遺言の内容を口で伝え、その内容を公証人は文書にまとめて、遺言とします。
このように作成された公正証書遺言は、公証人が介在することから、遺言が無効とされることはほとんどありません。しかし、次のような場合は、公正証書遺言が無効とされる可能性もあります。
遺言能力が否定される場合
自筆証書遺言と同様に、遺言書作成時において遺言者に遺言能力がなかった場合は、その公正証書遺言は無効となります。もちろん、公証人は、遺言者に遺言能力があるか、すなわち、遺言の意味を理解できているか確認しながら遺言を作成するため、自筆証書遺言に比べて遺言能力が否定されるケースは多くありません。しかし、公証人の確認が不十分であった場合等は、遺言能力がなかったと判断される場合もありえます。
口授が行われなかった場合
口授とは、遺言者が、公証人に対し、遺言の内容を口で伝えることをいいます。裁判例では、実際には遺言者が頷いていただけ、もしくは遺言者が「はい」という返事をしていただけだったとして、適法な口授がなかったものとして公正証書遺言を無効としたものであります。
無効を主張する手続
あなたが遺言の無効を主張しても、通常は、他の相続人や受遺者が遺言の無効を認めることはないでしょう。そのため、遺言の無効を主張する相続人は、①遺言無効調停の申立てや②遺言無効確認訴訟の提起(民事訴訟)を検討する必要があります。
①遺言無効調停は、家庭裁判所の調停委員会(裁判官である調停官と調停委員が構成員となります。)を交えて話し合いによる解決を目指す手続です。しかし、遺言の効力が問題となるケースではお互いに譲り合うことは難しく、調停(話し合い)が成立する見込みは乏しいでしょう。
調停が不成立となった場合は、②遺言無効確認訴訟を提起して、裁判所に遺言が無効かどうかを判断してもらうことになります。本来、この訴訟を提起する前には調停を申し立てる必要がありますが、話し合いが成立する見込みがない場合は、①遺言無効調停を申し立てずに②遺言無効確認訴訟を提起することができます。
これらの手続は、専門的な知識や戦略が特に要求される手続ですので、証拠の収集や分析も含めて、詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。
遺言の無効主張と遺留分侵害額請求
遺留分が認められている相続人が「財産はすべて〇〇に相続させる。」という遺言の無効を主張しようとする場合は、遺言の無効が認められなかったとき(遺言が有効であるとされたとき)に備えて、予備的に遺留分侵害額請求を行うことをお勧めします。
なぜなら、遺言無効確認訴訟は第一審だけでも1~2年ほどかかるため、敗訴判決を受けてから遺留分侵害額請求をしようとすると、既に遺留分侵害額請求権の消滅時効期間(1年)が経過している可能性が高いからです。
そのため、遺言の無効を主張する場合は、遺留分侵害額請求権の時効管理も含めて弁護士に早期にご相談されることをお勧めします。
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