相続した土地の名義変更をしない場合、不都合はありますか？
Ａ．過料の適用対象となったり、遺産分割協議書の作成が困難になったりするなどの不都合があります。
相続登記申請の義務化と10万円の過料
相続登記の申請期限
不動産登記法の改正により、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。それより前に開始した相続についても、3年の猶予期間がありますが、義務化の対象となります。
具体的には、次のとおりです。
①相続（遺言も含みます。）によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
②遺産分割により不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から３年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
また、申請期限内に相続人申告登記を申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したものとみなされる制度も新しく創設されました。早期の遺産分割が難しい場合は、この相続人申告登記を申し出る必要があるでしょう。
正当な理由
①②のいずれについても、正当な理由なく義務に違反した場合は１０万円以下の過料の適用対象となります。
法務省の通達（令和5）9月12日法務省民二第927号法務省民事局通達）では、正当な理由が認められる場合として次の場合が例示列挙されています。
・相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
・遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
・相続登記等の申請義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
・相続登記等の申請義務を負う者が配偶者からのDV被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
・相続登記等の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合
遺産分割協議書の作成が困難となるおそれ
遺言がない場合は、登記申請にあたり、できる限り早く遺産分割協議を行って、遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議書は相続人全員による署名又は記名と押印が必要になりますが、時間が経過すると、相続人であった人が亡くなったり、相続人間の関係性も変化したりして、昔に合意した（と思っていた）内容と同じ遺産分割協議書の作成が困難となることがあります。遺産分割協議書の作成ができない場合は、遺産分割調停の申立てを検討しなければならなくなります。
遺産分割協議書の作成は面倒と感じられるかもしれませんが、それを放置すると、遺産分割協議を再び行うような事態になりかねませんので、遺産分割協議書を作成し、名義変更までしっかり行いましょう。
この記事を担当した執筆者
- 弁護士法人 みそら総合 代表弁護士 細川 治
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保有資格 弁護士 専門分野 相続問題全般、不動産、企業顧問 経歴 2000年10月 司法試験合格 2001年 4月 最高裁判所司法研修所 入所（第55期） 2002年10月 弁護士登録 2002年10月 浜垣法律事務所 入所 2006年 3月 山城ひまわり基金法律事務所 所長就任 2010年 4月 山城みそら法律事務所 設立 2021年 3月 弁護士法人みそら総合 代表社員就任
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