相続人の中に行方不明者がいる場合は、どうすればいいですか?
A.相続人の中に行方不明者がいる場合は、①戸籍謄本等で生死や住所を確認し、②不在者財産管理人の選任申立てや③失踪宣告の申立てを検討することになります。
生死や住所の確認
遺産分割協議をしなければならないのに、相続人の中に行方不明者がいる場合は、戸籍謄本で生死を確認し、存命であれば本籍地の市区町村で戸籍の附票を取得して、住所を確認します。
住所が分かれば文書を郵送することができますので、遺産分割協議の申入れなどが可能になります。国内に居住しながらも、単に連絡を取り合っていなかったという意味で“行方不明”だった相続人については、有効な手段です。
しかし、住民票を異動させずに転居したり、施設に入所していたりする人もいますので、すべての方の住所・居所が判明するわけではありません。その場合は、実際に最後の住所地を訪問するなどの追加の調査が必要になります。
不在者財産管理人の選任申立て
戸籍謄本等の調査でも行方が知れない相続人がいる場合は、相続人などの利害関係者等は家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。その結果、選任された不在者財産管理人が、その行方不明者に代わって遺産分割協議等に参加するのです。
ただし、不在者財産管理人が遺産分割の協議等を行うには、家庭裁判所の許可が必要です。また、不在者に不利な遺産分割は困難ですので、基本的には、不在者に法定相続分に相当する遺産を取得させる内容の遺産分割となります。
また、この申立ては、家庭裁判所に予納金を納付しなければならないケースがある点に注意しなければなりません。
具体的には、不在者の財産の内容から、不在者財産管理人が不在者の財産を管理するために必要な費用(不在者財産管理人に対する報酬を含む。)に不足が出る可能性がある場合は、申立人は予納金として納付しなければなりません。予納金の額は家庭裁判所が定めますが、少なくとも数十万円となり、この還付はありません。
失踪宣告の申立て
行方不明の相続人(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)について、その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)は、家庭裁判所に失踪宣告の審判を求めることができます(民法第30条)。
普通失踪の場合は、失踪宣告を受けると、行方不明になってから7年が経過したときに死亡したとみなされます。例えば、父が亡くなったあと、長男が失踪宣告を受けて父よりも前に死亡したとみなされると、父の相続人として、長男の子(父から見た孫)が代襲相続人として遺産分割協議に参加することができます。
失踪宣告においては、不在者財産管理人の選任申立てのような多額の予納金は不要ですが、審判確定までに1年近くかかることになります。
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