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相続Q&A

家族信託とは? 財産を「守り・活かし・託す」仕組みの基本と活用例

Q 私(京田辺市在住)は、現在、認知症ではありませんが、私が所有する賃貸アパートについて、契約や手続きなどが大変になってきました。そこで、近くに住む息子に賃貸アパートの管理を任せたいのですが、どのような方法がありますか。
A 家族信託を利用することによって、賃貸マンションの管理(賃借人と契約のやり取り、修繕等)を息子に任せつつ、ご自身の生活のために賃料を受け取ることが可能です。

1 家族信託とは?                        

家族信託」は、ご自身の老後や万一の事態に備え、大切な財産(不動産、金銭、有価証券など)の管理や承継を、信頼できる家族に託す財産管理・承継の仕組みです。

特に、ご自身の判断能力が低下した場合や、従来の「遺言」や「成年後見制度」では対応できない複雑な要望がある場合に、その力を発揮します。

2 家族信託の基本構造                                     

家族信託は、財産を「託す人」、「管理する人」、「利益を受け取る人」という、三者の関係性によって成り立っています。

委託者(信託法第2条4項)

委託者とは、財産の所有者です。財産を託し、信託契約の内容を決定する人を指します。委託者が信託の契約の「目的」を設定します(信託法第2条1項)。

受託者(信託法第2条第5項)

受託者とは、信託財産の管理者です。財産の名義人となり、信託契約の目的に従って、財産の管理処分を行う義務を負います。

受益者(信託法第2条第6項)

受益者とは、信託財産の利益享受者です。信託財産から生じる経済的な利益を受け取る権利を持つ人を指します。

委託者が受益者を兼ねることもできます。

基本的な類型

委託者=受益者の類型

信託が設定されると、財産の「法律上の所有権(名義)」は受託者に移転しますが、「経済的な所有権(利益を受ける権利)」は受益者に残ります。

この分離構造があるからこそ、委託者(親)が元気なうちは利益を受け取り続けながら、管理行為(契約や手続き)だけを受託者(子)に委ねることが可能になります。

3 民事信託の活用が有効なケース                                               

民事信託の大きな強みは、従来の制度ではカバーできなかった「財産管理の柔軟性」と「承継の自由度」にあります。

財産の「凍結」対策としての活用

信託は判断能力が衰える前から効力を発揮します(成年後見制度は、判断能力の低下が前提となっています。)。

 委託者が認知症になっても、受託者(家族)の管理権限は維持されるため、財産管理が滞ることはありません。

例えば、信託財産が賃貸アパートの場合、入居者との契約や修繕の手配を、受託者が委託者(オーナー)の判断を待たずに実行することができます。

「二次相続」以降の承継先指定

遺言では、財産を渡す先(承継先)を「一代限り」でしか指定できません。

信託契約では、「私が亡くなったら妻へ、妻が亡くなった後は長男へ」というように、二代先(二次相続)以降の承継先まであらかじめ指定しておくことができます。

例えば、株式などの財産を信託し、経営権は後継者(長男)に、経済的利益は残された家族(配偶者)に分配するなど、複雑な承継設計が可能になります。

4 賃貸不動産オーナーの具体例でみる信託の流れ                                

「私」が委託者となり、賃貸アパート(収益不動産)の管理を受託者として息子に任せたい場合を想定した、具体的な流れは、以下のとおりです。

信託契約の「設計」

信託財産: 賃貸アパートとその収益(家賃収入)(信託法第2条第3項)

信託目的: 「委託者の生活資金の確保と、不動産の適切な管理・維持」(信託法第2条第1項)

受託者の権限: 賃貸借契約の締結・解除、修繕工事の手配、必要に応じた売却権限の付与など、具体的な管理行為の範囲を明記します(信託法第26条)。

信託契約書の作成・締結

トラブル防止のため、公正証書として契約を締結します(信託法第3条1号)。

不動産の信託登記手続き

不動産の名義を「私」から息子へ変更する登記(所有権移転)を行います(信託法第14条)。

登記簿には信託目録が記載され、この不動産が信託契約下にあることが第三者に対して明確になります(不動産登記法第97条第1項)。

運用開始と受託者の義務

息子(受託者)は、賃料収入を管理するための信託専用の銀行口座を開設・利用します(信託法第34条)。

受託者は、信託目的に従って忠実に不動産を管理し、家賃収入から経費を差し引いた利益を、受益者である「私」へ定期的に交付します(信託法第88条)。

受託者は、受益者に対して財産管理の状況を報告する義務(受託者の義務)を負います(信託法第36条、第37条)

5  専門的なアドバイスを受けることの重要性                                    

民事信託は、その自由度の高さゆえに、契約内容の設計ミスが将来、予期せぬ税務問題や家族間の紛争を引き起こす可能性があります。

また、ご事情によっては、遺言や他の財産管理制度(成年後見制度等)との選択や併用なども考えられますので、大切な財産管理や承継について不安をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事を担当した執筆者
弁護士法人 みそら総合 代表弁護士 細川 治
保有資格 弁護士
専門分野 相続問題全般、不動産、企業顧問
経歴 2000年10月 司法試験合格 2001年 4月 最高裁判所司法研修所 入所(第55期) 2002年10月 弁護士登録 2002年10月 浜垣法律事務所 入所 2006年 3月 山城ひまわり基金法律事務所 所長就任 2010年 4月 山城みそら法律事務所 設立 2021年 3月 弁護士法人みそら総合 代表社員就任
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