おひとりさまの死後、遺産を自治体等に寄付するにはどうすればいいですか?
Q. 私(城陽市)は、独身で一人暮らしをしています。子どもはいません。父母は既に亡くなり、家族は兄(宇治市)だけとなりましたが、兄とは昔から仲が悪く、今は連絡すら取っていません。私が死んだら、遺産を自治体等に寄付したいと思っています。そのためには、どういう方法がありますか。
A.遺言による寄付(遺贈)が考えられます。
1.遺贈の種類
遺贈とは、遺言によって第三者に財産の全部又は一部を無償で譲り渡すことをいいます(民法964条)。遺産(相続財産)の全部を第三者に遺贈することを包括遺贈、遺産の一部(特定の遺産)を遺贈することを特定遺贈、といいます。
2.寄付(遺贈)するための準備
寄付を受けてもらえない可能性
民法では、包括遺贈の場合は、受遺者(遺贈を受ける人)が相続人と同一の権利義務を有すると定められています(民法990条)。そのため、借金などのマイナスの遺産がある場合は、預貯金等のプラスの遺産のみならず、マイナスの遺産も全て受遺者が承継することになります。
もっとも、受遺者も包括遺贈を受けるかどうか選択することができます。受遺者は、包括遺贈があった(効力が発生した)ことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に遺贈の放棄の申述をすることで、包括遺贈を受けないことができます(民法990条、915条、938条)。
また、特定遺贈の場合も、受遺者が遺贈を受けないという選択をすることができますが、この場合は家庭裁判所の手続は不要です。
寄付の内容について事前の確認
このように死後に遺贈を受けてもらえないと、質問のケースでは、「私」の弟が法定相続人として「私」の遺産を全て承継することになってしまいます。「私」の意思に反する結果となりますが、既に「私」が亡くなっていますので、どうしようもありません。
このような事態を避けるためには、寄付を希望されている場合は、遺言書を作成する前に寄付したいと考える自治体や団体に遺贈を受けてくれるか確認することが重要です。
ご自身で確認することが難しい場合は、当法人の弁護士が遺言コンサルティングサポートをご利用ください。遺言内容をご提案等に加えて、ご依頼者様に代わって自治体等へ連絡し、受けることが可能な財産の種類や振込先等を確認いたします。
寄付を実現するためには遺言執行者が必要
通常、自治体等は金銭でのみ遺贈を受けています。つまり、不動産、預貯金、株式等をそのまま遺贈することはできません。そのため、遺言で遺言執行者を指定して、不動産の売却、預貯金の解約・払戻、株式の売却等を行って、最終的には現金を自治体等が指定する口座に振り込む必要があります。
遺言執行者は、死後に利害関係人が家庭裁判所へ選任を申し立てることもできますが、おひとりさまの場合は、申し立てる人がいないこともあり得ます。
そこで、遺言書で遺言執行者を指定しておくことをお勧めいたします。当法人の弁護士は遺言執行者としての実績もありますので、遺言による寄付をお考えの方は、まずは当法人の弁護士にご相談ください。
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